プレスリリース 2016年6月7日

第16回ニッポン・コネクション映画祭 授賞式レポート
高齢化するヤクザのコメディ、ファミリードラマ、そしてドキュメンタリーが受賞へ

フランクフルト市内にて、6日間で100本以上もの日本映画を上映し、数多くのカルチャープログラムを開催した第16回日本映画祭ニッポン・コネクションが、5月29日に幕を閉じました。今年は、昨年を上回る1万6000人以上が来場し、多くの映画、コンサート、ワークショップのチケットは、すぐに完売となりました。約60名のゲストを迎えられたことも、大盛況の理由の一つといえるでしょう。今年も日本から、映画監督、俳優、プロデューサー、アーティストが作品を紹介するために、映画祭に来場しました。映画祭の締めくくりとして、最終日には、アーティストハウス・ムゾーンテュルムにて授賞式が行われました。

観客投票で決定された今年のニッポン・シネマ賞は、北野武監督の『龍三と七人の子分たち』に贈られました。引退した元ヤクザを主人公に、日本の高齢化社会を、皮肉を込めて描き出した作品です。お笑い芸人としての監督自身のルーツに戻った作品とも言えるでしょう。今回で12回目となるこの賞は、フランクフルト・メッツラー銀行から協賛され、賞金として2000ユーロが授与されます。賞はメッツラー銀行のゲアハート・ヴィースホイ氏により、オフィス北野のプロデューサーである市山尚三氏に手渡されました。

今年のニッポン・ヴィジョンズ観客賞は、田中圭監督の『桜の樹の下』に授与されました。このドキュメンタリー映画は、公営団地に暮らす高齢者たちを繊細なタッチで描きだしました。今年で3回目となる本賞は、日本文化普及センターの協賛により、受賞者に1000ユーロが贈られます。授賞式では監督本人にトロフィーが手渡されました。

今年第5回目となるニッポン・ヴィジョンズ審査員賞は、菊地健雄監督に授与されました。初監督作品であるファミリードラマの『ディアーディアー』は、日本の地方都市の過疎化を題材にしつつ、ある三兄妹の不安定な関係を描き出しました。とりわけ、そのような重いテーマでありながらも、明るく軽快に描いた演出と、主演女優の演技が、審査員から高く評価されました。今回、審査員を務めたのは、グンター・デラー氏(映画監督/ドイツ)、市山尚三氏(オフィス北野プロデューサー/FILMeXプログラム・ディレクター)金原由佳氏(映画評論家)です。受賞作品の監督には、東京の日本映像翻訳アカデミー(JVTA)より、次回作の字幕翻訳が贈呈されました。

ニッポン・ヴィジョンズ部門のスペシャル・メンションには、今年は2作品が選ばれました。田中圭監督による、ドキュメンタリー作品『桜の樹の下』は、観客から好評を得たのみならず、審査員からもその業績を高く評価されました。1993年生まれの近藤啓介監督によるSFコメディの『食べられる男』もまた、審査員のデラー氏が表現するように、独創的な社会風刺であるとして賛辞を受けました。授賞式の後には、松永大司監督をお迎えして、クロージング作品として『トイレのピエタ』が上映されました。

来年の第17回ニッポン・コネクションは、2017年5月23日から28日に開催いたします。ムゾーンテュルムそしてナクソスホールのヴィリープラムル劇場に、再び日本の映画文化が結集します。

運営
日本映画祭ニッポン・コネクションは、公益団体「Nippon Connection e.V.」のメンバーである約70人のボランティアチームによって組織されており、フランクフルト市長のペーター・フェルドマン氏、および在フランクフルト日本国総領事の神山武氏にご後援いただいております。