プレスリリース、2016年5月5日

第16回日本映画祭「ニッポン・コネクション」:プログラム完全版

日本の映画文化の豊かさを、ここで今更強調する必要はないでしょう。ただ参考までにひとつ数字をあげると、日本では、映画館で上映されている映画の55%以上が国内で製作された作品なのです。ぜひ、フランクフルトにお越しいただき、そのクオリティーの高さをご自身の眼でお確かめいただきたいと思います:2016年5月24日から29日に第16回日本映画祭「ニッポン・コネクション」が開催されます。この期間に、約100本の日本映画を上映します。そして、沢山の日本の俳優、監督、アーティストが来場します。今年も、映画祭のメイン会場はムゾーン塔とナクソスホールです。

黒沢清監督、ニッポン名誉賞へ

 今年も、ドイツ・ルフトハンザ社の協力により、第2回目となるニッポン名誉賞が贈られます。今年は、日本映画界に欠かせない存在となった黒沢清監督に授与されます。黒沢監督は、恐ろしさがじわじわ忍び寄ってくる「静かな」ホラー映画の巨匠とされており、世界中の映画祭で高く評価されています。この黒沢監督に、5月24日午後7時半からの授賞式で、ニッポン名誉賞が授与されます。それに引き続き、カンヌ映画祭受賞作品である『岸辺の旅』の上映があります。ニッポン・コネクションでは、黒沢監督に敬意を表して、『CURE キュア』(1997)、『トウキョウソナタ』(2008)、『クリーピー 偽りの隣人』(2015)の3作品を上映します。

プログラムハイライト:アニメーション映画

 最も有名な日本のアニメーション映画スタジオ、スタジオジブリは現在小休止中ですが、それでなくても、日本には、短編から長編まで、まだ数多くのアニメ作品があります。これらをニッポン・アニメーション部門で上映します。牧原亮太郎監督『屍者の帝国』と、中村たかし 監督とマイケル・アリアス監督による『ハーモニー』は、どちらも伊藤計劃のSF小説をアニメ化した作品ですが、全く異なるストーリー展開と美意識が楽しめる作品です。かたやアクション溢れるフランケンシュタイン神話のスチームパンク・バージョン、かたや反ユートピア的未来ヴィジョンとも言えるかもしれません。『ハーモニー』はマイケル・アリアス監督を直々にゲストに迎えて上映します。原恵一監督の『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』は18世紀の有名な浮世絵師、葛飾北斎の娘を描いた物語です。さらに、岩井俊二監督初のアニメーション映画『花とアリス殺人事件』と、短編映画プログラムを2本:『東京藝術大学:アニメーション』と 『A Wild Patience − 女性監督によるインディーズ・アニメショート』 をお届けします。

フランクフルトで海外プレミア

 2015年より、日本でもNetflixのストリーミングサービスが始まり、早速オリジナルドラマが配信されています。廣木隆一氏が総監督を務めた『火花』は、2人の芸人同士の複雑な友情を描いた物語です。本作は、昨年第153回芥川賞を受賞、三島賞にもノミネートされた、お笑いタレント又吉直樹による同名小説を原作としています。ニッポン・コネクションでは、この全10話を海外プレミアとしてお届けします! ゲストとして主演の林遣都氏、波岡一喜氏らをフランクフルトにお迎えします。

福島から5年

 東日本大震災から5年が経過しました。この記憶と傷跡といかに向き合うかが、今年の映画祭のもう一つの焦点となっています。
この間、震災に関して、数多くの作品が作られてきました。しかしながら、私たちはどのようにすれば、この災害と被災の現場を本当の意味で描き出すことができるのでしょうか?
岩崎孝正監督のドキュメンタリー映画『Landscapes after 3/11』では、3人の芸術家が福島の風景を映像化します。大久保愉伊監督の『ちかくてとおい』は、大槌町の再生を記録したドキュメンタリーです。両作品ともドイツプレミアであり、監督からの舞台挨拶があります。劇映画においても、このトラウマ的な出来事とその記憶が題材となっています。例えば、園子温監督のSF映画『ひそひそ星』は、人間の感情や記憶の特異なありようを問いかけます。また、映画研究者デニス・フェッター氏が、災害の映像を扱うドキュメンタリー映画における、東日本大震災の直接的な関係と影響について『Shattered Surfaces – Visualizing Japan’s 2011 Disasters』と題したテーマで講演される予定です

劇映画、ドキュメンタリー映画と各賞について

 ニッポン・シネマの部門では、今年も多くの日本映画界のスターがご来場の皆様の前で自ら作品をご紹介します。なかでも、ゲストの1人、行定勲監督の最新作『ピンクとグレー』は、日本のショービジネス界の舞台裏に焦点を当て、華やかな表面の背後に見え隠れする人間の深淵を描き出しています。また横浜聡子監督による『俳優 亀岡拓次』では、永遠の脇役俳優である亀岡拓次の物語を通して、映画というミクロな宇宙に視点が向けられています。横浜監督はこの寡黙な映画にたくさんのシュール・レアリスティックなシーンを組み込むと同時に、現在の日本映画のハイライトを提示しています。今泉力哉監督には、韓国音楽界の若手スターが競演するロマンチックな恋愛ドラマ『知らない、ふたり』をフランクフルトで自らご紹介いただきます。ニッポン・シネマの部門で最も優れた作品を、ニッポン・シネマ賞として表彰いたします。観客賞に選ばれた作品には、賞金2000ユーロがメッツラー銀行より寄贈されます。
優れた映画を作るのに、必ずしも莫大な予算を必要としない、ということを私たちに教えてくれるのが、ニッポン・ヴィジョンズ部門です。ここでは、大都会の輝きの背後にある世界が映しだされます。例えば想田和弘監督の『牡蠣工場』は、瀬戸内海で行われている牡蠣の養殖をテーマとした素晴らしい作品です。また、ヒース・カズンズ監督による『Doglegs』は、障がい者プロレスラーたちを描いています。今年も日独両国の審査員によって、ニッポン・ヴィジョンズ審査員賞が最も優れた長編作品に与えられます。賞品として、日本映像翻訳アカデミーより、字幕の製作権が授与されます。また、今年で三度目の実施となるニッポン・ヴィジョンズ観客賞は、人気投票によって選ばれた作品に、賞金1000ユーロと共に贈呈されます。

レトロスペクティヴ:日本の怪談映画

 幽霊や超自然的存在・・それが今年のニッポン・レトロの主役です。「物の怪ー日本の怖い話」と題し、フランクフルトのドイツ映画博物館にて5月27日~29日まで、1940年代から60年代に作られた9本の怪談・ホラー映画が上映されます。木下恵介監督の『新釈 四谷怪談』(1949)に始まり、中川信夫監督の『亡霊怪猫屋敷』(1958)、山本薩夫監督の『牡丹燈籠』(1968)などが登場します。怪談は、江戸時代には既に歌舞伎や落語、浮世絵などの芸術分野で、人気ジャンルとなりました。日本学者のエリザベス・シェラー博士による講演『Female Ghosts in Japanese Cinema』が、国際交流基金の協賛により行われます。

ニッポン・カルチャー

 ニッポン・コネクションでお楽しみいただくのは映画にとどまりません。約100の長編・短編映画に加え、日本料理・音楽・文化を体験できるニッポン・カルチャー部門があります。5月27日午後10時からは、実験映画監督の牧野貴氏が、英国のジャズ演奏家ヒラリー・ジェフェリー氏のライブ演奏とともに、3D映画プログラムを披露いたします。5月28日午後10時からは、日本人歌手のCuusheが東京のネオンの明るさと孤独を、メランコリックなエレキポップの伴奏とともに歌い上げます。

食と映画はとても相性が良いものです。5月26日の夜7時半からエリック・シライ監督のドキュメンタリー映画『The Birth of Sake』がニッポン・フィルムディナーにて上映されます。当映画上映に際して、美味しいお弁当、アップルワイン(フランクフルト名物)、そしてもちろん「お酒」も提供されます。映画祭の始まりには、ニッポン名誉賞受賞者である黒沢清監督による『トウキョウソナタ』の上映を、豪華なビュッフェとお届けするニッポン・フィルムブランチもあります。映画祭開催中、フランクフルトの有名ラーメン店「無垢」が、ムゾーン塔のカフェに出店します。5月26日~28日の間、日本のおいしいラーメンをお楽しみいただけます。

漫画や日本の格闘技に関するワークショップ、料理教室やクラシックな茶道に加え、今年はユーモラスな物語を語る日本の話芸、落語も開催されます。落語家の春風亭ぴっかり氏が、5月26日にケース劇場にて、涙やドキドキ、なにより笑いを誘う語りの世界に、皆様をお連れします。

東京を拠点とする日本映像翻訳アカデミー(JVTA)との協同で開催される日本映画の字幕ワークショップでは、ジョナサン・M・ホール氏が映画字幕の芸術へと皆さんを誘います。吉田博昭監督の『ゴキブリたちの黄昏』(1987)に合わせて、ホール氏はさらに "Through Bug Eyes: Insect Optics and Global Anime"というテーマで講演も行います。

ニッポン・キッズ

 今年のレトロスペクティブのテーマに合わせて、5月28日には俳優のYuki Iwamoto氏が子供たちのために不気味な怪談話をよみがえらせます。また、日本の歌舞伎役者の気分を味わえるようなフェイス・ペインティングも、お子様にお楽しみいただけます。

かつては空き地や道端で「紙芝居屋さん」が行っていた、紙芝居の上演もあります。牧野貴氏を講師にお迎えして開催される映画ワークショップ「Handmade 3D Organic Noise」では、3D映画の制作が体験できます。もちろんお子様用の映画もご用意しております。米林宏昌監督によるアニメーション映画『思い出のマーニー』は、12歳のアンナと、不思議な家に住む、謎めいた友達マーニーの物語です。

プログラム&チケット

プログラムの全容は4月末より映画祭ホームページにてご覧になれます。www.NipponConnection.com

チケットの前売りは、2016年4月29日より開始されました。チケットはホームページ上(www.NipponConnection.com)、あるいは数多くのチケット売り場にてお求めになれます。

主催者

日本映画祭「ニッポン・コネクション」は70人のボランティアチームから成る公益団体「ニッポン・コネクション」により運営されています。フランクフルト市長ペーター・フェルトマン、並びに神山武在フランクフルト日本総領事にご後援いただいております。

開催場所

アーティストハウス ムゾーン塔, Waldschmidtstr. 4, Frankfurt (映画祭メイン会場)
ナクソスホール内ヴィリー・プラムル劇場, Waldschmidtstr. 19, Frankfurt (映画祭メイン会場)
ドイツ映画博物館, Schaumainkai 41, Frankfurt
マールゼーン映画館, Adlerflychtstr. 6, Frankfurt
ケース劇場, Waldschmidtstr. 19, Frankfurt
アテリエ オイレンガッセ, Seckbacher Landstr. 16, Frankfurt

上映作品一覧
(2016年4月12日現在)

ニッポン・シネマ

『無伴奏』 矢崎仁司監督、日本2016
『俳優 亀岡拓次』 横浜聡子監督、日本2015
『きみはいい子』 呉美保監督、日本2015
『The Birth of Sake』 エリック・シライ監督、USA 2015
『クリーピー 偽りの隣人』 黒沢清監督、日本2016
『CURE キュア』 黒沢清監督、日本1997
『ビリギャル』 土井裕泰監督、日本2015
『火花』 廣木隆一(総)監督、白石和彌/沖田修一/久万真路/毛利安孝監督、日本2016
『残穢 —住んではいけない部屋−』 中村義洋監督、日本2016
『岸辺の旅』 黒沢清監督、日本2015
『ラブ&ピース』 園子温監督、日本2015
『下衆の愛』 内田英治監督、日本2015
『モヒカン故郷に帰る』 沖田修一監督、日本2016
『トイレのピエタ』 松永大司監督、日本2015
『ピンクとグレー』 行定勲監督、日本2015
『龍三と七人の子分たち』 北野武監督、日本2015
『ソレダケ/that’s it』 石井岳龍監督、日本2015
『知らない、ふたり』 今泉力哉監督、日本2015
『トウキョウソナタ』 黒沢清監督、日本2008
『ひそひそ星』 園子温監督、日本2016

ニッポン・アニメ

『花とアリス殺人事件』 岩井俊二監督、日本2015
『思い出のマーニー』 米林宏昌監督、日本2014(ニッポン・キッズ)
『屍者の帝国』 牧原亮太郎監督、日本2015
『ハーモニー』 中村たかし/マイケル・アリアス監督、日本2015
『百日紅〜Miss HOKUSAI〜』 原恵一監督、日本2015
『ゴキブリたちの黄昏』 吉田博昭監督、日本1987
「A Wild Patienceー女性監督によるインディーズ・アニメショート」 (短編映画プログラム)
「東京藝術大学:アニメーション」(短編映画プログラム)

ニッポン・ヴィジョンズ

『あのひと』 山本一郎監督、日本2015
『蜃気楼の舟』 竹馬靖具監督、日本2015
『ディアーディア−』 菊地健雄監督、日本2015
『DOGLEGS』 ヒース・カズンズ監督、日本/アメリカ2015
『風の波紋』 小林茂監督、日本2015
『グッド・ストライプス』 岨手由貴子監督、日本2015
『函館珈琲』 西尾孔志監督、日本2016
『カタブイ』 ダニエル・ロペス監督, スイス/日本 2015
『ケンとカズ』 小路紘史監督、日本2015
『神様たちの街』 田中幸夫監督、日本2016
『まなざし』 ト部敦史監督、日本2015
『食べられる男』 近藤啓介監督、日本2016
『夢の女 ユメノヒト』 坂本礼監督、日本2016
『牡蠣工場』 想田和弘監督、日本/アメリカ2015
『新しき民』 山崎樹一郎監督、日本2014
『ひつじものがたり』 河合健監督、日本2015
『桜の樹の下』 田中圭監督、日本2015
「保坂大輔スペシャル」短編映画プログラム
「3/11後の世界」 (短編映画プログラム)
「Skip City 国際Dシネマ映画祭」 (短編映画プログラム)

ニッポン・レトロ

『新釈 四谷怪談(前篇/後篇)』 木下恵介監督、日本1949
『雨月物語』 溝口健二監督、日本1953
『亡霊怪猫屋敷』 中川信夫監督、日本1958
『東海道四谷怪談』 中川信夫監督、日本1959
『四谷怪談』 三隅研次監督、日本1959
『地獄』 中川信夫監督、日本1960
『鬼婆』 新藤兼人監督、日本1964
『怪談』 小林正樹監督、日本1964
『牡丹燈籠』 山本薩夫監督、日本1968

ニッポン・カルチャー

コンサート&パーティー

ニッポン・ライブ・オンステージ:Cuushe/Cinema Concret/ Action Direct Film/牧野貴とヒラリー・ジェフリーによる映画&音楽パフォーマンス/カラオケパーティー

グルメ

日本料理グルメツアー/日本料理教室/ニッポン・フィルムディナー/ニッポン・フィルムブランチ/酒ワークショップ/茶会/緑茶ラウンジ

ワークショップ

テーマ:薙刀/着物/絞り染め/漫画/映画字幕/南京玉すだれ/吹き替え

講演&パネル・ディスカッション

Shattered Surfaces – Visualizing Japan’s 2011 Disasters / Female Ghosts in Japanese Cinema / International Co-productions / Through Bug Eyes: Insect Optics and Global Anime

その他

展示/ニッポン屋台ー日本の市場/ゲームセンター/落語/ニッポン・ブック・クロッシング/折り紙/殺陣パフォーマンス/指圧マッサ―ジ/VHSビデオナイト

ニッポン・キッズ

牧野貴の映画ワークショップ/紙芝居ー日本の絵付き朗読劇/ニッポン・フェイスペインティング/侍指圧/映画上映:『思い出のマーニー』

『あのひと』

『龍三と七人の子分たち』

『風の波紋』